ツタンカーメンは低ホスファターゼ症だった?!

最終更新: 7月31日

この記事は、2014年に投稿した記事ですが、予想以上に旧サイトで読まれていたので、再投稿しました。この記事に出てくるドイツのゲラルド・ブラントさんは、ドイツの患者会の代表の方です。


https://www.hpp-ev.de/


ツタンカーメンの死因に新たな説が浮上 有名なファラオ(古代エジプト王)、ツタンカーメンは酵素が欠乏する奇病にかかっていた?


ドイツ、ヴュルツブルク


2010年2月、「米国医師会雑誌」(JAMA)に、有名なファラオ、ツタンカーメン王のミイラに関する研究論文が掲載されました。過去に行なわれた調査とDNA検査を検討し、最新の見解を示した論文です。


著者のザヒ・ハワス博士らは


ツタンカーメン王の死因はマラリアと第2ケーラー病だった

と結論づけていますが、それに対して、ドイツ人作家のゲラルド・ブラントさんが反論を唱えています。


特に反論しているのが「第2ケーラー病」という部分。

ブラントさんは、3年間に渡り、ツタンカーメンに関する考古学的発見やX線検査結果を収集し、ある珍しい病気の典型的な症状(軽症例)との比較を行なってきました。


その珍しい病気とは、低ホスファターゼ症(HPP)です。


ブラントさんは低ホスファターゼ症の専門家で、自説を表わした科学論文が自然・臨床人類学の国際的な専門誌「Anthopologischer Anzeiger」に受理され、出版されました。


『ツタンカーメンのミイラの足に第2ケーラー病らしき症状がみられる』という内容の記述を読んだ時、『それについてもっと知りたい』と興味が湧いてきたのです。

ザヒ・ハワス博士らの論文にはツタンカーメンの他の症状と怪我についても書かれていましたが、過去の論文も全部合わせて検討した結果、『第2ケーラー病は到底あり得ない説だ』

と思うようになりました」とブラントさんは語ります。


ケーラー病は中足骨の血行を阻害しますが、骨の壊死もひき起こすという病態生理学的モデル(医学的説明)は存在しません。
ツタンカーメンの骨にみられる症状を直接ひき起こしているのは何なのか?はっきりした原因が抜けていると感じました。


偶然にも、それから数週間も経たないうちに、ブラントさんは何人もの低ホスファターゼ症の患者さんからの電話を受けることになります。

低ホスファターゼ症は、生まれつき特定の酵素が欠乏しているために骨代謝に異常が出る珍しい疾患です。


電話をかけてきた患者さんたちは具体的な症状を語り、中には「骨の壊死」や「脊椎の癒合」を訴える患者さんもいました。この時、ブラントさんは、ツタンカーメンに同じパターンの症状がみられることに気づいたのです。


ブラントさんは「米国医師会雑誌」に掲載されたザヒ・ハワス博士らの論文を検討し、その他の情報や専門家の見解も検討するなど、さらに調査を進めました。


その結果、



ツタンカーメンと親族(特に父王アクエンアテン)が、
軽度の低フォスファターゼ症にかかっていた可能性が高い


と確信するようになりました。


その根拠として、以下の点を挙げています。

  1. ツタンカーメンの足のX線検査結果(骨が壊死・変形している部分、骨密度が異なっている部分など)すべてを検討してみると、軽度の低ホスファターゼ症の可能性が高い。

  2. ケーラー病を発症するのは圧倒的に6~10歳までの男児(女性の場合は12~18歳)が多いが、十分な時間をかけて足を休めるようにすれば、自然に完治するのが普通

  3. 2005年、ツタンカーメンの大腿骨(膝のすぐ上の部分)が折れているのが発見されたが、若い男性がこの部分を骨折するのは非常にまれで、ひどい自動車事故以外ではまずあり得ない。 ケーラー病では、足に損傷は及ぶものの、大腿骨のような太い骨が折れることはない。

  4. ツタンカーメンと親族の骨格には、脊椎の湾曲(=脊柱側弯症、曾祖母チュウヤはツタンカーメンよりも重症)や「マドンナの指」(炎症性やリウマチ性のケースもあり、低ホスファターゼ症の症状に類似)などといった、別の際立った特徴もみられる。

  5. ツタンカーメンの脊椎には、明らかな「癒合」が何カ所もみられる。

  6. ツタンカーメンと父王アクエンアテンの体型(線が細い、筋肉がほとんどついていない)も、低フォスファターゼ症で説明がつく。 彼らの体型は、典型的な低ホスファターゼ症患者の体型である。

  7. 低ホスファターゼ症では、胸郭が変形することもある。アクエンアテンの胸郭にも変形があり、そのことはすでに指摘されているが、マルファン症候群やクリッペル・フェール症候群、クラインフェルター症候群など、ごくまれな病気と関連づけられている。

  8. ツタンカーメンの親族は全員が低身長で、アクエンアテンは160センチ、ツタンカーメンは165センチ前後しかない。これも低ホスファターゼ症の典型的な特徴である。

  9. ツタンカーメンのミイラを見ると、頭蓋骨の底部(大後頭孔)に特殊な形状がみられるが、これは低ホスファターゼ症患者にみられる特徴とよく似ている。

  10. ツタンカーメンが重度の歩行困難を患っていたことはよく知られており、その原因は(おそらく骨の壊死による)左足の変形と右側の偏平足と言われているが、これらはすべて低ホスファターゼ症の典型的な症状である。

  11. ツタンカーメンは内反足だったと言われているが、ブラントさんの論文によると、これと非常によく似た臨床兆候が低ホスファターゼ症によってひき起こされる場合があるという。 その臨床兆候とは、腓骨(膝から下の骨)に発達障害があるもので、同じ兆候がみられる子供の画像が何枚か、ブラントさんの論文に掲載されている。

  12. ツタンカーメンは杖を愛用しており、約200本もの杖が一緒に埋葬されていた。

  13. ツタンカーメンが政務を行なっている姿を描いた絵は、すべて座った姿になっているが、政務中のファラオは立っているのが普通。 低ホスファターゼ症患者の多くは、長時間歩いたり、長時間立っていたりすることができない。

  14. 古代エジプトの王家では、近親婚がごく一般的に行なわれていた。実際、近親婚によって、低ホスファターゼ症のような劣性遺伝病の発症率が上がる。 ツタンカーメンの両親は兄と妹だった。

  15. ツタンカーメンと異母妹 アンケセナーメンは二人の子供をもうけたが、いずれも死産だった。 残念なことに、死産も低ホスファターゼ症患者の家系にみられる特徴である。


低ホスファターゼ症は比較的まれな遺伝病で、アルカリホスファターゼという酵素(正確に言うと「組織非特異型aP」)が不足しているために起こります。

典型的な症状として、

  • 全身の骨が弱い(骨がもろくなる病気=骨粗しょう症に類似)

  • 骨の変形(くる病など)

  • 骨や関節の慢性炎症(骨髄炎や関節炎)

  • 際立った筋無力症

などがあります。それ以外にも、

  • 低身長

  • 線が細い

などといった特徴がよくみられます。


低ホスファターゼ症が軽症の場合は、中足骨(足の骨)に症状が出ることが圧倒的に多く、強い慢性炎症を伴い、骨折、骨の壊死、骨の変形をひき起こします。

ブラントさんは


ツタンカーメンは軽症の低ホスファターゼ症だった

と確認しています。


この病気がさらに進行すると、大腿骨が骨折しやすくなり、ツタンカーメンにも同じ症状がみられます。


低ホスファターゼ症自体はかなりの重病ですが、軽症の患者さんは一見しただけでは病弱に見えず、障害を持っているようには見えないこともあります。

しかし、それは単に現代医療(矯正靴や抗炎症薬など)のなせる業にほかなりません。


ツタンカーメンは現代医療の恩恵をまったく受けられませんでした。後年、『矯正用』の特注サンダルを履いていたという話が伝わっているだけです。


以上の点を踏まえて、ドイツの低ホスファターゼ症の患者・家族会(ドイツHPP)で会長を務めるブラントさんは


ツタンカーメンと親族のミイラから取り出したDNA標本で現存しているものがあれば、それらを使ってDNA検査を行ない、第18王朝の王族にみられる骨格異常の根本原因が低ホスファターゼ症であるかどうかを調べるべき

と提案しています。


実に斬新な説ですが、何が一番斬新かと言えば、

歴史上もっとも有名な二人のファラオ、ツタンカーメン王とアクエンアテン王の双方に認められる珍しい身体的特徴を医学的に説明した

という点ではないでしょうか。


二人の王がわずらっていたと思われる病気については、これまで様々な病名が挙げられてきましたが、どれも憶測の域を出ませんでした。


ブラントさんの新説は、DNA検査によって真偽を確認できるかもしれないのです。



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